[人間関係能力] ブログ村キーワード
昨日に引き続き、後編を書かせていただきます。
この記事を初めてお読みになる方は、昨日の記事を
先にご覧ください。
こちらです。
人間関係の悩み解決事例「やり方を逆転する(前編)」
そして知的障がい者福祉施設の職員だった正美さん(仮称)は、洋子さんにこう言いました。
「じゃあお母さんから電話が来ないようにする方法を教えてあげる」
洋子さんはとても喜び、耳をそばだてて必死に聞こうとします。
「自分からお母さんに電話したら良いのよ」
洋子さんは驚きです。
お母さんと電話したくないから悩みを打ち明けているのに、自分から電話しろって…
それはないだろうという感じです。
納得いかない洋子さんに、正美さんは続けて言います。
「お母さんはね、娘が元気にやってるのかどうかが心配なの。だから先に自分から電話して、私は元気に皆に迷惑もかけることなく頑張ってることを言ってあげれば、電話はかかってこなくなるわよ。」
洋子さんはなんだかわからないけど、とにかくかかってこなくなるならやってみようということで、自分からお母さんに電話してみました。
そして自分にとって好ましくないはずの会話が、何故か今回は少しましなように思えたのでした。
お母さんはどうやら、いつも少し馬鹿にするような、「自分の娘は人に迷惑をかける子どもだ」という関わりをしてきたようです。
人に迷惑をかけてない?とか、ちゃんとやることやってる?とか、そういう会話ばかりです。自分を想って言ってくれる言葉には感じない、そんな会話が今まで続いていたわけです。
しかし今回は違いました。自分から、お母さんが心配するようなことを気遣って先に言うので、お母さんはその言葉を言ってきません。それなら良かったと電話を切るだけでした。
これだったら毎月できると、洋子さんはそれから毎月電話を自分からかけるようになりました。
そして本当にお母さんから電話がかかってくることはなくなりました。
素晴らしいことに、洋子さんはそれからも約1年ほどこの電話を続けていました。
正美さんは心配になって洋子さんに最近のお母さんとの関係はどうなのかと尋ねてみました。
すると、
「最近はお母さんが心配だから、週に1回電話してあげてるの」
と言います。
どうやらお母さんから、いろんな悩み相談をしてくるように変わっていたようです。心配ばかりしていた娘が自分から責任持って電話をかけてくる。そんな姿勢が、自分の相談を聞いてもらう存在へと印象を変化させたのかもしれません。
そして殆ど今まで会話したことのないお父さんも、最近は電話に出るようになり、「お前たまには元気な顔見せに、ご飯でも食べに帰っておいで」と言われ、今では、以前帰りたくもなかった家に、ご飯を食べに帰ることがあるそうです。
この事例の素晴らしいところは、職員の正美さんが、お母さんとの長年の確執について重く捉えすぎず、お母さんをどうにかしようとしなかったところです。普通、こういう話を聞くと、長年の確執なんだからと、無駄に食い込んだ対策をとろうとすることが多いものです。
そして洋子さんにも、「お母さんの気持ちに立ってよく考えるように」といった責めるような教育もしませんでした。
つまり誰も悪者にしない対策を提案したわけです。提案したのは今までとは違うコミュニケーション手段だけだったわけです。
お母さんは娘を心配するだけでなく、「人に迷惑をかけることが自分にとって迷惑だ」と思いそうなことを洋子さんから聞いていたわけですから、お母さんを悪者にしそうなところです。
また自分もお母さんだった正美さんですから、洋子さんに「お母さんという人はね…」と説教を始めてしまいそうな気もします。
これは本当に理想的ブリーフセラピー手法です。
ブリーフセラピーの解決志向は、問題の原因と、望ましい解決には必ずしも因果関係はないという考え方です。
正美さんは、単に逆転発送で、心配してかけてくるんだから、心配しないようにすれば良いという、ただそれだけのちょっとしたアイデアを教えたわけです。
専門的に言えば、問題を抱えた悪循環を見つけて、それを別の循環に変化させるというとてもオーソドックスなブリーフセラピー手法を提案したことになります。
アメリカのMRI(精神研究所)が得意とする手法です。
こんな提案をした正美さんを僕はブリーフセラピストとして、とても素晴らしいと思います。
正美さんと洋子さんの人間関係の悩み解決物語。
こんな事例が社会に増えて行けば良いなぁと素直に想う、そんな事例紹介でした。
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