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- 2020.10.17 Saturday
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はじめまして、ブログへのご訪問ありがとうございます。
私は心理カウンセラーであり、心理教育家の上野大照と申します。
自ら心を鍛え恥ずかしくない在り方を提供したいという思いから、自身を心匠と名乗らせていただいております。
今回は、私が専門としているセラピー手法「ブリーフセラピー」について説明させていただきます。
日本では、カウンセリングによって心理的な問題を解決する方法のことを心理カウンセリングまたは心理療法と呼びますが、ブリーフセラピーは、その心理療法の数ある技法の一つです。
ブリーフセラピーには狭義の概念と広義の概念があります。
この分野にあまり詳しくない方には、少し専門的な言語が入った文章かもしれませんので、お許し下さい。
「ブリーフ」とは持ち歩きするためのケースをブリーフケースと呼んだりするように、気軽に簡単に短い時間で効果的なものを指す言葉です。
そういったブリーフの意味を持つ通り、ブリーフセラピーとは、従来の時間をかけて精神面を深掘りしていく心理カウンセリングとは違い、相談者が生活上で抱えている悩みを、できる限り負担をかけず、短期間で解消していく為の心理カウンセリング手法(心理療法)です。
カウンセリングに当たっては、もちろん相談者の心に寄り添い、共感的理解を大切にします。
しかし、ブリーフセラピーはそれ(心深く押し込めた正直な思いを言いやすくすること)だけを問題解決の手段とするのではなく、クライアントが抱える実際の問題を指示的で計画的に解消することに焦点を当てています。
そのためにブリーフセラピーでは、相談者に対し積極的な質問をすることで情報を収集し、具体的なアドバイスや提案をしていきます。ある意味、そこが最も他の手法と違うところと言えるのかもしれません。
ブリーフセラピーを知る為には、その重要な基本的考え方として、「解決志向」というものを理解しておくのが良いと思います。
簡単に説明するなら、
『問題が解決することは、必ずしもその原因と関係しているわけではない』
という概念だと思えば良いと思います。
これまでの人生によって抱えることになった深い問題ばかりに目を向け過ぎ、今抱えている状況や、これからどうなりたいのかを見出すことの障害とならないことに配慮している考え方なのです。
もし根本的原因と思われるようなことが解明されないままであっても、抱える問題が解決され、
『継続的に問題となっている同じ状態が起こりにくくなり、良い軌道が繰り返されるようになればそれで良し』
そういったスタンスの概念です。
この考え方に沿えば、それは全てブリーフセラピーだとする広い意味での解釈が存在します。そしてこの考え方は、別名ブリーフサイコセラピー(短期的心理療法)とも言われています。つまり、ブリーフサイコセラピーは広い意味でのブリーフセラピーであり、狭い意味でのブリーフセラピーもあります。
狭義のブリーフセラピーは、基本的な手法が限定されることで、統一的な短期解決モデルが示されているのが特徴です。
私は日本ブリーフセラピー協会という団体の大阪支部を任されていますが、こちらは狭い意味でのブリーフセラピーを扱っている学術団体です。
広い意味(広義)のブリーフセラピー(ブリーフサイコセラピー)と、狭い意味(狭義)のブリーフセラピーという点について、もう少し詳しく説明させていただきます。
狭義の概念は、人の日常に起こるサイクルの中には、起き続けてほしくない悪循環と、今は例外的だが今後も起き続けて欲しい良循環があり、悪循環を切断し、良循環を増やそうとする日常的なサイクルの変化に的を当てたものです。
これは文化人類学者だったグレゴリー・ベイトソンをチームリーダーとして世に出た『ダブルバインド理論(正式名:統合失調症の理論化に向けて)』がベースとなっており、ここから始まったコミュニケーションと病理に関する研究に端を発しています。
この研究から「コミュニケーションの語用論」として実を結んだコミュニケーション論では、精神病理について「病理はコミュニケーションによって維持されている」と定義されるに至ります。
これには、少し頭を柔らかくして考える必要があるかと思いますが、こういった例を考えてみてください。
ある学生が2年前から不登校になったとします。
この子はお母さんと二人暮らしで、2年前に父親とは離婚しています。
子どもはいつも何かを我慢しているような、何か言いたくて言えないようなそぶりがありますが、お母さんには何か本質的なことを言えないようです。
お母さんは、2年前に子どもの意見を聞くこともできず、離婚に至ってしまったことが、不登校の原因なのではないかと思い悩んでいますが、それについて子どもにたずねても返答がありませんから、問題としては袋小路です。
子ども側にとっては、それを口にできない事情もあるのかもしれません。
ここで、ブリーフセラピーが大切にするのは、この離婚というキーワードの方ではなく、そこから始まった2年間の親子間のコミュニケーションや、お子さんだけではなく、お母さん自身の心境や経験、周囲の人たちとの関わり方の方です。
つまり、原因として、そもそも問題を生んだ何かではなく、それをそのまま維持しているものに目を向けるわけです。
そこには悪循環が潜んでいると見立てます。
こういった事例の場合、「お母さんが聞き出そうとする」→「子どもが口をつぐむ」→「余計にお母さんが聞き出そう」→「いよいよ力を込めて何も言えないようになっていく」とするというような悪循環があるのかもしれませんし、「お母さんだけでこの問題に対処しようとする」→「子どもは窮屈になる」→「お母さんは孤独を感じどこかに相談する」→「子どもは見捨てられたと思うようになり諦めを強めていく」というような土壺にはまっていくような悪循環もあるかもしれません。こういった悪循環には、問題に対して狭い視野で向き合い過ぎている場合もありますし、避けて見ようとしないという本人の逃げが隠れている場合もありますが、今度はそこをお母さんに問い正しても、それに対してお母さんにとっての抵抗が強まるというように、なかなか活路が見いだせない場合があります。
そのため、悪循環を続けているコミュニケーションや環境、行動的な側面に目を向け、それをわずかにでも変えてみる(Do something different)ようにアプローチするのが特徴です。
また、日常には必ずしも悪循環だけが続いているわけではなく、先程書いた良循環も例外的に存在しているものです。
この親子の場合は、こういった問題を自然と意識することがなく、何故かうまく母子がうまく話せているようなタイミングが存在しました。
それは、家の中ではない場所で話をしている時です。
そこでは「最近部屋では何してるの?」とお母さん→「別に何も…」とお子さん→「これおいしいよ」とお母さん→「そうだね(少し笑顔)」というお子さんという具合に、それが特別良いという話ではないですが、家での雰囲気とは違う世間話が多少しやすいようです。
これは良循環と見立てて、これをヒントに何か拡大(Do more)できないかと考えてみます。
この事例の場合、外で話す機会をもう少しだけ創ってみることもできるかもしれませんし、お母さんとお子さんという閉じた関係や空間だけではないものが、必要とされているのかもしれません。
その意味では、2年間の話すらうまくできない関係性から、世間話ならできるという関係性に入るだけでも、問題を維持させてしまっている状況からは、少しずつ変化できていけるということになります。
要点だけをお伝えすれば、前記の悪循環を切断するアプローチ(MRIアプローチ)と良循環を拡大しようとするアプローチ(SFA)を活用する二大短期解決モデルを指して、狭義のブリーフセラピーと呼んでいます。
ブリーフセラピーは、上記のグレゴリー・ベイトソンを理論の父とし、その後、不思議にも既に複雑な問題の短期解決に成功しており、“魔法使い”とも言われた天才セラピスト、ミルトン・H・エリクソンを技法の父と呼ぶことで、二人の父が存在していると言われています。
エリクソンはそれまでフロイトの精神分析や、ユングの分析心理学などが主流だった心理療法の世界を覆し、非常識でわけがわからない謎の会話(コミュニケーションによる催眠)で治療していくという手法を編み出した人です。
彼の信念も前記同様、クライアントの実際生活上の問題を解消することにあったと言われています。
彼の治療は広範囲なもので、強迫神経障害やトラウマ、原因不明の各種神経症など、精神が原因と思われる症状のすべてに渡っていました。
また実際、殆どの問題を解消できるのではないかという精度の高さ(9割は顕著な治療効果を示したという話もあります)を誇っていました。
彼はクライアントが自分に居付くことを良しとはしませんでした。
実生活はセラピストとのものではない、リアルな生活空間や考え方の中に自分が入っていってはいけないのだと考えていたようです。
だからできるだけ短い時間で解消することに努め、結果として、それがブリーフセラピー創始に繋がっていったのではないかと思います。
彼の手法はアンコモン(非常識)セラピーとも言われ、その名の本をベイトソンの研究チーム員だったジョン・ウィークランドとジェイ・ヘイリーが17年の歳月をかけて研究し、出版しています。
それだけ当時の理論的な前提に、彼の手法を検討できる材料はなかったことを物語っています。
彼の心理業界への功績は、甚大なものがあり、ここでそれを書き記すことは到底できません。
そのため、ここではブリーフセラピーとの接点に当たる分に的を絞って解説させていただこうと思います。
彼はとても不思議な方法で、一見すると複雑な心理問題を解決させていました。
その一端を紹介させていただきます。
(筆者の記憶による描写なので、正確さを欠いている可能性があります。ご了承ください。)
<胃が悪い奥様(Aさん)>
ご主人のお姉さん(義姉)が入り浸る家に嫁いだAさんは、自分のつくった料理を「弟の好みではない」とか「栄養バランスが悪い」などと言って捨ててしまい、自分のつくってきた料理をご主人に食べさせ、食事中はリビングに入ってこないようにさせ、しかし、完璧な家事をしていないと盛大に指摘してくることが長期間続き、うつ状態になるだけでなく、義姉の顔を思い浮かべるだけでトラウマによる発作を起こし、吐き気を催してしまうという心理症状を呈していました。
Aさんはどこに相談に言っても解消されない身体症状を抱え、エリクソンのもとを訪れます。そしてAさんにエリクソンは、「それは運がいい。胃が悪いことは使えますね。」と言って、お姉さんが来るとわかったら牛乳を1リットルのみ、お姉さんが玄関から入ってくる瞬間にそれを吐いてかけてしまいなさい」と提案します。もちろんそんなことに最初は抵抗されますが、恨みが強くなっていたAさんにとっては、快感な解決法でもありました。
それを実行したAさんは、胃の悪さを利用することでお姉さんを家に寄せ付けないことに成功し、自然とうつ状態が解消していくということがありました。
これは後に、逆説的介入(パラドキシカル・アプローチ)と呼ばれるようになった技法であり、エリクソンは「問題は解決の材料として使えるもの」という独自の発想を持っていました。ユーモアをいつも愛していたエリクソンならではのものとも言えるでしょう。今では彼のアプローチの多くがコンプライアンス上実施できないとも言われますが、その発想法は現在のブリーフセラピーにも継承されています。
エリクソンが得意としていた手法は、そもそも催眠による暗示だったのですが、彼自身晩年には催眠をあまり使わなくなったと言われています。
その理由は、催眠でできることが、催眠誘導なしに普通の対話だけで提供できるようになってきたからではないかと、筆者は推測していますが、彼の催眠療法的技法は別団体(ミルトン・エリクソン財団)で手厚く継承されており、その点はブリーフセラピーと一線を画す(広義のブリーフサイコセラピーには入る)ものです。
しかし現地アメリカでは、この財団自体が、自分たちの手法をブリーフセラピーと称しているところもあり、ここに研修に訪れた日本人がブリーフセラピーとはミルトン・エリクソンが生み出した方法論だとしてそのまま輸入してしまい、国内でそのように書かれた出版物も多く出ています。
また、前記の良循環を拡大する視点を持つSFA(ソリューション・フォーカスト・アプローチ)※団体名はSFBTA(ソリューション・フォーカスト・ブリーフセラピー・アソシエーション)も、実はベイトソンのチームが生んだとも言える家族療法総合研究施設(MRI:メンタル・リサーチ・インスティチュート)とどちらが本当のブリーフセラピーかという名称論争を繰り返しています。
それぞれ別々の場所へ研修に行った日本人が、別々の経路で輸入した経緯を持つブリーフセラピーという名称は、日本国内で混乱を生んでいることも事実です。
日本ブリーフセラピー協会では、その辺りを厳密に(どれが正しいということではなく、そういった経緯があることを)伝達するだけでなく、前述の悪循環を切断するMRIアプローチと良循環を拡大するSFAによる二大アプローチをブリーフセラピーとし、その他の短期的心理療法は全てブリーフサイコセラピーまたはその他の手法だと表現していることを、再度お伝えしておきます。
ちなみに、2017年には日本にブリーフセラピーを最初に輸入した長谷川啓三先生とその意志を継承している若島孔文先生により、SFBTAの世界大会で、日本では二大短期解決モデルをどちらもブリーフセラピーだとして統合的に活用していることを、逆輸入的に発表しており、一定の評価を得たと報告がありました。
先にも触れましたが、ブリーフセラピーを語る場合、その基礎とも言える解決志向についてある程度理解しておく必要があります
解決志向とは、原因の特定は問題の解決とは無関係であるという考え方です。
それとは逆の原因論とは、問題が解決するためには、原因がわからなければ解決できないという考え方とも言えます。
そのため、原因論は問題の原因探し(過去)に注力しますし、解決志向は今の問題を状況として正確に捉えること(今)と、これからどうしていくのか(未来)というところにのみ焦点を当てます。
結果として原因論はどのような問題なのかという情報を多くに考えることになりますので、深い精神を探っていくという良い面がある反面、時間が長くなったり、問題が複雑化することもあります。
解決志向は、どのように解決するのかという情報を多く扱う為、どうしてそうなってしまったのかという反省を含むようなやりとりよりも、今からどうなったら良いのかについてを重視しています。
筆者としては決してそんなことはないと言いたいところですが、扱うセラピストによっては、問題について軽視しているように感じられるというデメリットもあります。
コンテンツ(問題の内容)をよく聞くこともありますが、プロセス(どのような状況が繰り返されているのか)をより重視しています。
それはブリーフセラピーが、日頃繰り返してしまっている行動の中に、解決のヒントがあると見立てているからです。
私が所属する日本ブリーフセラピー協会については、こちらをご覧下さい。
関西の方は、ホームページ内にある大阪支部(短期療法を学ぶ会・大阪)を私が担当させていただいておりますので、お声掛けいただけましたら幸いです
筆者は私見として、相談者が抱える既存概念を、意識的にも、無意識的にも変化を起こし、それによって相談者が望む方向に進むように支援することこそが重要だと捉えています。
期間も基本的には数回または短期間で解消していくことを目指して取り組んでおりますが、問題に対し、長期に渡る心理及び行動面の教育やコーチングの必要性を感じる場合、多くの回数をかけることもあります。
その解消能力は、先ず精神の症状として、うつ、トラウマ、OCD(強迫的な障害)、各種神経症などの問題、感情コントロールの問題、難病のストレス問題、不定愁訴、更年期障害、睡眠障害、その他ストレスを伴うあらゆる問題などに実績があります。
心理症状については、ストレスと無関係な症状はほぼ0だと思われます。そしてその日々のストレスに対して何らかの対策を必ず講じますので、どのような症状にも当てはまること援助をしていると自認しています。
また、現実的な問題として、お子様の不登校問題、家族間のDV、会社のパワハラ問題、中高生のいじめ問題、介護に疲弊した家族問題、借金問題、パチンコ・競馬などのギャンブル依存、地域住民同士のトラブルなども多く経験しており、そういった問題も数回または短期間で解消されるパターンを多く経験しています。ただ、やはり1割程は時間が予想以上に長くかかってしまったり、顕著な効果をお見せ出来るまでに至らなかったり、途中でカウンセリングを終結することとなったり、別の専門家へ紹介したケースもありますので、過剰な期待をしていただくわけにもいきません。
そしてセラピストの姿勢としては、ブリーフセラピーだけの単一的な型にとらわれない、自由で無型、統合的なセラピーであることこそが正しい姿勢であると判断しています。
セラピー(カウンセリング)をするに当たっては、一つだけ条件があります。
それは、直接的に会話ができることです。
エネルギー系やボディ系のセラピーではないので、言葉を話さないで行うことはできません。
その意味で会話がままならない状態での統合失調症や、重度のうつなどはお受け出来ないこともありますし、医師と連携の上で行うことが適切なこともあります
※筆者は3箇所の心療内科と提携させていただいております。
・さくメンタルクリニック 作田院長(日本ブリーフセラピー協会大阪支部会員)
・ふくだこころのクリニック 福田院長(日本ブリーフセラピー協会大阪支部会員)
・中西心療内科・内科医院 中西院長(日本ブリーフサイコセラピー学会会員)
各種心理教育講座やセラピーライブ(オープンカウンセリング)なども行っておりますので、ご興味のあるコンテンツがございましたら、それぞれの画像をクリックしてみてください。
ここまで詳しくお読みくださいましたこと、感謝申し上げます。
上野 大照
令和元年12月18日更新
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JUGEMテーマ:ブリーフセラピー