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- 2020.10.17 Saturday
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大学で人間科学部に在籍していた頃に書いた記事を書き直してみます。
「人の身体は一万年前からあまり進歩していないことがわかってきた」
と教授に教わりました。
よく言われていたのは、「顕著な進化がない以上、その当時の生活を取り入れることが大切なんです」とのこと。
もう随分前のことなので詳細は忘れたのですが、恐らく免疫学で有名な藤田紘一郎先生の言葉だったと思います。
今科学の行く末は、二つの流れが握っているようです。
一つは、よくある統計が裏打ちした、確率論の世界です。
「こういうとき、一番高い確率ではこうなる」
といった考え方の元になるものですね。
これこそが科学であり、他は違うと考えている人さえ居るかもしれません。
もう一つは、個という存在に視点を当て、世界は決して標準化されたものではなく、それぞれに物語(ナラティブ:narrative)があるという考え方です。
ナラティブという言葉は、日本語で言えば、物語のことを指しています。
よくナレーションという言葉がありますが、あれはストーリーを物語ることを指しており、ナラティブという言葉は、物語そのもののことですね。
科学と言っても、私の関心事は人の生き様ですから、心理学や人間科学という視点からコメントしてみたいと思います。
先ず、確率論から標準化して考えるところですが、例えば幸福度調査というものがあります。
2010年に読売新聞社がこんな記事を書いていました。
「カネで買えぬ?幸福感、年収7.5万ドル(630万円)で頭打ち」
【ワシントン=山田哲朗】収入が上がるにつれ生活の満足度は上がるものの、必ずしも幸福感が増すとは限らないとする調査結果をダニエル・カーネマン米プリンストン大教授らがまとめ、米科学アカデミー紀要で7日発表する。
「幸福は金で買えない」という通説を裏づける報告と言えそうだ。カーネマン教授は、米国人45万人以上を対象に調査会社が実施した電話調査のデータを基に、年収と幸福の関係を統計的に分析した。暮らしに対する満足度を10段階で自己評価してもらう「生活評価」の数値は、年収が増えるにつれ一貫して上昇した。
しかし、「昨日笑ったか」などの質問で測る「感情的幸福」の度合いは、年収7万5000ドル(約630万円)前後で頭打ちになっていた。
教授は「高収入で満足は得られるが、幸せになれるとは限らない」と結論している。
これは何が一番比率が高いのかという観点で考えており、あらゆるものを標準化して考える考え方ですよね。
この辺り、私は人の幸福や心理など、複雑されたものについては、統計では答えが出ないと思っているのです。
たしかに年収は少ないより多い方が良いでしょう。
しかし、それは人によってどの程度なのか、全く違います。
資産家には資産が元になる争いが多かったり、家としての厳格さが個人の幸福度を下げていたりすることもよくあります。
多すぎれば少ない方が、争いやしきたりも少なくて良いのかもしれませんし、少なすぎれば多くなる方が、もちろん買えるものが増えて、生きる環境なども自由にできるという点で、良いのかもしれません。
どちらにしてもこのこと一つをとってみたところで、何が正しい幸福への導き方なのか、とても難しい尺度に悩まされます。
これに対して、個の物語に焦点を当てたナラティブ・アプローチを、人生や心、自由度などという点に当てはめれてみると、随分納得いく考え方だと言えます。
今までの生きてきた人生に何が不足していたのかを抽出し、本当にはどうやって生きていきたいのかを導いたり、今起きていることを分析して、違うパターンを作ってみたり、うまくいっていることを見つけて、それが増えるように考えてみたり…
直接的に幸福度を上げる為の話が様々に可能です。
そう考えると、心理や人生という点に的を絞った場合、大きな統計データ(ビッグデータ)は参考程度にしておき、その殆どはナラティブな視点でいくべきなのではないかと思っているのです。
あくまで私見ですが。
私は一つの手法に囚われるのが苦手なので、セラピーを越えるという意味で自分をメタセラピストと名乗らせて頂いておりますが、その中でも、かなりの重要度を持っているのがブリーフセラピーです。
ブリーフセラピーの基本概念の一つには、この「人を社会の標準化に合わせない」という根本精神があります。
だから、カウンセリングにおいて、目の前の人が今どのような環境にあるのか、そしてどうやって生きてきたのか、何を大切にしている価値観を持つ人なのか、何を好み、何が苦手なのか、そういった個人とそれを取り巻くストーリーに耳を傾けることが、何よりも大切なのです。
人に標準的な幸せはない。
人にはそれぞれの幸せだけがある。
私はそう信じ、一人一人と真摯に向き合うセラピストでありたいと願っています。
講師:長谷川啓三(教育学博士)
MRI(米国精神研究所)の日本代表であり、1980年代から日本へブリーフセラピーを米国から輸入した第一人者。著書多数。日本ブリーフセラピー協会代表。日本心理臨床学会理事。日本家族心理学会理事。
日時:平成27年3月1日(日)13:10開場 13:30〜16:30
※終了後には日本ブリーフセラピー協会大阪支部会員限定の懇親会も予定しております。
場所:大阪市立生涯学習センター(大阪駅前第2ビル5階)
申込み方法などの詳細はこちらのチラシをご覧ください。
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